道教に関するメモ

道教の歴史

道家の誕生と拡大

戦国時代に『道徳経』が出現 老子なる人物が説いたとされる思想
これが神話上の人物・黄帝が説く無為の政治の思想と融合し無為自然をテーマとする黄老思想として広まる
その後老荘思想へと変化していく
前漢で道家という流派にまとめられる


神仙説 東海三山(蓬莱山・方丈山・瀛州山)や崑崙山なる場所に不老不死の神仙がいるという

  • 修行を積むことにより神仙になれる
  • 鬼神信仰 不可視の超常的存在・鬼神があるとする

諸派と勃興
太平道:後漢の人物・于吉が『太平清領書』なる書を手に入れ創成したといわれている

  • これが張角の手に渡り黄巾党の結成・黄巾の乱勃発に繋がったとも
  • 首過:鬼神に懺悔する
  • 符水:護符を水につけたり粉にして溶いたりしたもので病を癒す

五斗米道:南北朝時代には天師道とも 蜀で張陵が創始

  • 思想は太平道に酷似 鬼神や三官への懺悔・病の治癒など
  • 教団組織として高度に発達
  • 一般信者・鬼卒をまとめる祭酒をさらに天師がまとめる
  • 拠点である漢中を治と呼ばれる教区に分けて統治
  • 後に寇謙之が新天師道を立ち上げているがこちらの末路は不明

上清派:東晋で許謐が創始

  • 神仙が魏華存に授けたとされる『上清経』が主な経典
  • 茅山で神降ろしを行い神仙の言葉を聞くなどする

霊宝派:三国時代に成立 多数の派閥が存在

  • 葛玄・葛洪・葛巣甫などが継承・整備した『霊宝経』が主な経典
  • 葛巣甫により加えられた経典には大乗仏教の影響が見られる
  • 修行する個人だけでなく皆が神仙となることを目指す・輪廻の概念・原始天尊による救済など

三皇派:三国時代に帛和が創始したとされる

  • 『三皇経』が主な経典 呪術的な効力は高いとされたが現在は散逸

金丹道:金石を炉で加熱し調合により薬を精製する術 後漢左慈が神人から授かった術とされる

  • 葛洪の『抱朴子』・劉安の『淮南子』が有名

統合と成熟

後漢以降盛んになった仏教に対抗
三洞四輔なる七つの基本経典が陶弘景によりまとめられる 仏教の三蔵に対応

  • 洞真経(上清経)・洞玄経(霊宝経)・洞神経(三皇経)が主な経典
  • 太玄経(老子)・太平経(太平道)・太清経(金丹道)・正一経(五斗米道)がこれらを輔佐
  • 後には三十六部尊経なるものも作られる

李淵・李世民は自身を李耳(老子)の子孫だと主張し道教科挙に取り入れるなどした
唐代になると仏教との競合から教義も統一されていく その過程で仏教思想を一部吸収

経籙三山と華北三派

宋代になると民衆への浸透が始まる
経籙三山 江南を拠点として宗派が形成される

  • 龍虎山:張陵の息子・張盛が天師道を復興させる 後に正一教となり上清派・霊宝派を吸収して江南全域の総本山となる
  • 茅山:上清派が再び盛んになる
  • 閣皂山:葛玄が仙人になった地とされ霊宝派の拠点となる

華北三派 河北で金~元にかけて最盛

  • 全真教:王重陽が創始 三教一致を掲げ儒教仏教の要素を取り入れた 丘処機がチンギス=ハーンに伝えたことで優遇される やがて丘処機を開祖とする龍門派・馬鈺を開祖とする遇山派に分かれる
  • 道教:劉徳仁が創始 儒教を取り入れる 後に全真教に吸収される
  • 太一教:蕭抱珍が創始 正一教・全真教に吸収される

内丹術の隆盛 外丹と異なり敷居が低いので民間に広まった

  • 命宗:気の精錬により肉体的な不滅を目指す
  • 性宗:気と共に精神を修練し精神的な不滅を目指す
  • 雷法:雷の力により邪鬼を退散させる 内丹と法術は元を同じくするものだとされた

正一教と全真教は明代に二大宗派となり現在に至る

道教の思想・経典
老子:『道徳経』で道の思想を説いた

  • 道は物を生み出す無形の理とされている
  • 無為自然の思想 有為を批判しあるがままにすることを説く
  • 柔弱と剛強 柔なるものが剛なるものに勝るとし軍の組成などに言及
  • 長生久視 道の思想を体得すると結果として寿命が延びる あくまでも結果であり目的ではない これを目的とする考えが神仙思想へ発展

荘子:老子の思想の要所を継承 『荘周』を遺す

  • 斉物論:あらゆるものは道の表出の一形態に過ぎず(万物斉同)世間的な価値判断は等しく無意味
  • 道の遍在:道の理念はあらゆるものに宿る
  • 長生不死:修行により長寿を得られる
  • 気一元論:万物は道に従い気から生成される

三洞四輔

  • 洞真経(上清経):一万回読むだけで仙人になれるという『大洞真経』・体内神を解説した『黄庭経』など 体内神を思い描きつつ(存思法)瞑想を重ねることで体内神が現出し天へ昇る これを繰り返すことで体内神に導かれ天上へ行くことが出来る
  • 洞玄経(霊宝経):『度人経』などが主なテクスト 生命力を宿した経典で段階的に奇跡を起こし最終的には死者が蘇って皆で神仙になれるとされる 大乗仏教の影響が見られる
  • 洞神経(三皇経):呪術的効力が非常に高いとされた 天地人の三皇が由来 鬼神の使役・悪鬼魍魎への対処法など
  • 太玄経:『老子道徳経』『老子西昇経』など
  • 太平経:太平聖君なる神が人々の混乱を終息させ太平の世をもたらすとされる
  • 太清経:『周易三同契』『抱朴子』など金丹道に関して記述
  • 正一経:規律・規則・儀式について記述

神仙説
黎明期の史料は散逸しているが『漢書』にある書名などから内容をある程度伺い知れる

  • 歩引・導引 体の屈伸運動・呼吸法などによる健康法
  • 按摩 現在のものとほぼ同じか
  • 芝菌 神仙が食する特殊な植物とされていたキノコの服用法
  • 黄治 錬丹術(黄白の術)
  • 医経・経方 それぞれ医学・薬学の理論 『黄帝内経』が現存
  • 房中 男女を陰陽に割り当てた長生のための術
  • 吐故納新 地の濁った気を含む穀物を断ち天の純なる気を呼吸で取り入れることで長寿・昇天を可能にする
  • 化色五倉の術 五臓に宿る体内神を意識した瞑想により飢えを防ぎ寿命を延ばせる
  • 禹歩 旅行の神とされる禹の歩みを真似ることで鬼神の加護を得られる
  • 鬼神信仰:天が王と政を、鬼が民衆を監視し義に背くと罰を下す 呪符により鬼神の加護を得たり邪鬼から身を守ったりもできる
  • 内丹術:体内に流れる気を精神によって精錬し内なる金丹によって不老不死を得る
  • 外丹術:黄金の腐食しない性質を鉱物の調合により作る仙薬で肉体に実現