儒教に関するメモ
インデントくんが仕事をしてくれなかったため可読性がかなり損なわれましたが個人的なメモなのでセーフ、機会があれば改良したい
儒教の歴史
原始儒教
- 礼に関する思想をまとめなおして五経を整備し詩書礼楽を中心に教えを説いた
- これを弟子が編纂したものが『論語』
- 「仁」の概念 孔子曰く「人を愛すること」 思いやりのような人間的な愛と解釈され「礼」を通して実現する
- 仁は曽子や思子を通して孟子に、礼は子夏や子游を通じて荀子に継承される
孟子 戦国時代の人物 姓は孟、名は軻
- 「仁」に加えて「義」を説く 仁愛だけでなく正義が必要
- 王道政治の実践を説く 堯や舜、三王に倣い徳によって仁政を行うべきである
- 性善説の提唱 人は生まれながらに四端(惻隠・羞悪・辞譲・是非)を持ちそれぞれを伸ばすことで四徳(仁・義・礼・智)に到達する(四端説)
荀子 戦国時代の人物 姓は荀、名は況(郇出身だったことから荀と呼ばれていたとする説もある)
漢唐訓詁学
焚書坑儒 秦の時代の思想弾圧
漢が覇権を握ると黄老思想が台頭
班固 『漢書』を執筆
訓詁学 経(本文)に注(解釈)を付け加える(前唐~六朝時代) 時代が進みこれが古くなるとさらに疏を付け加え補う(唐~宋)
鄭玄 後漢の学者 馬融の弟子でもある
孔穎達 唐の皇帝・太宗の命で疏の集大成『五経正義』の編纂を主導
- これは科挙の教科書として重用されることとなる
『十三経注疏』 宋の時代にまとめられた疏 『五経正義』も収められている
- 五経のみでなく『論語』『孟子』『爾雅』『孝経』にも注釈をつけている
- 『礼経』は三礼(『儀礼』『周礼』『礼記』)に、『春秋』は春秋三伝(『左氏伝』『穀梁伝』『公羊伝』)に分けられているためこの名で呼ばれる
韓愈 中唐の人物
柳宗元 中唐の人物 韓愈らとともに古文復興運動を実践
李翺 韓愈の弟子 『復性書』を執筆
宋学 先駆けとなった程顥・程頤兄弟の名から程朱学とも 後には性即理の思想から性理学とも呼ばれる
- 「聖人学んで至るべし」 解釈だけでなく実践により聖人を目指すべきだと説く
- 仏教の影響(理の概念など)や道教の影響(気の概念など)から邪悪な学問と揶揄されもする
- 政治理念の礎として後の諸王朝に根強く残る 朝鮮や日本にも影響を残す
- 周敦頤 『太極図説』などを執筆 道教の太極図・易経の陰陽・五行思想を踏まえ世界を太極図で表せるとする宇宙観を提唱
- 張載 陰陽二気の集散により万物の消滅生成を説明(気一元論)
- 二程(程顥・程頤) 宇宙の根本原理(理)と物質の構成要素(気)で万物の消滅生成を説明し(理気二元論)朱子学の根本をなす 老荘思想の影響が見られる
- 邵雍 数理計算により万物の消滅生成や宇宙の挙動を説明
朱子(朱熹) 北宋五先生の思想をまとめて朱子学として大成し宋学の源流を作る
- 理気二元論を継承
池の水面が月を映すがごとく万物には理が反映されておりこれに従って気が凝縮し万物を形成しながら循環している
- 性即理の理念
人間の心は善の本性たる「性」と感情・欲望などの「情」からなる
礼は理そのものではなく理の表出である
人間には性という形で理が反映されておりこれに立ち返ることで悪が(行為として)表出しなくなる
情に惑わされず性に従うため厳しい修練が要求される
- 格物致知の理念
万物の理を追究する(窮理)ことで真理に到達できるとする方法論
後に形式的な知識主義に陥る原因となる
王陽明(王守仁) 陽明学の開祖となる 心即理の主張・陸象山(陸九淵)の名から心学・陸王学とも呼ばれる
人間は生まれた時から心を有しており(「満街聖人」)理は心に反映されているはずである
「本来備えている仏性の再発見」をテーマとする禅の思想によく似ている
心を性・情に分けず心自体が理であるとする点で性即理と異なる
- 致良知の理念
自身の心の納得を追求する(窮心)ことで真理に到達できるとする方法論
学びと実践を一体とする「知行合一」に帰着する
本当に納得した物事なら実践に結びつくはずである
- 考証学(考拠学) 明~清で発達 気一元論に基づき理よりも論理的な根拠を重視
礼もあやふやな理より重要視された
文献と同時代の書物を徹底的に調べ解釈の根拠を探す実証的な学問となった
疏の信頼性を疑問視し新疏を整備していく これらの業績は『皇清経解』にまとめられ現在まで伝わっている
- 顧炎武 明末の人物 考証学の始祖の一人
随筆『日知録』では実証主義的な議論と政治・社会批判を行っている
- 黄宗羲 明末の人物 考証学の始祖の一人とされる
空疎な観念だけでなく実践を重視する学問を提唱
清の専制政治批判と革新的な政治思想から「中国のルソー」とも
- 戴震 清の人物 考証学を大成
主観にとらわれず論理性を重視することを説く
『近代字義疏証』では理を情から生じるものと考えている
儒教の根本経典・関連思想
経典の初出にはばらつきがある(e.g.『書経』の成立が殷の時代、『詩経』の成立が周の時代など)
爻2種が示す2極(両儀)、これを2つ合わせた四象、3つ合わせた八卦、八卦を2つ合わせた六十四卦に意味を割り当てる
筮竹から卦を選び出すことで吉凶を占う(後述する『繋辞伝』に詳しい)
後に前漢で流行した陰陽思想と融合し爻を陰陽、森羅万象を六十四卦に対応させるようになった
これを解説する十翼(『繋辞伝』『説卦伝』など)と共にまとめられ現在に伝わる
十翼による補填によって単なる占いだけでなく人事変化の理を探求する書となった
世界を説明する書として最も重要視される
秦の時代に散逸するが一部が発掘され隷書体で書き直され『今文尚書』として広まる
漢の時代に孔子の家から新たに発掘されたとされる『古文尚書』は科斗(蝌蚪)文字で書かれている
『五経正義』以降は後者を重視するのが主流
- 詩経(毛詩) 各地の民謡などを多数収録 漢の毛享・毛萇らがつけた注釈書(伝)とともに普及
周の王が政治の普及度合いを調べるために編纂したとされる
儀礼:主に士に関する礼について解く
周礼(周官):理想的だったとされる周の官制に言及 一部史実と食い違う部分もある
礼記:周礼の付記 周~漢の礼に関する様々な言説も収録
礼記を最重要視するのが主流
- 春秋 俊秀時代の歴史を孔子が簡潔にまとめたもの
注釈となる三伝(『公羊伝』『穀梁伝』『左氏伝』)とともに伝わる
『五経正義』以降は左氏伝を重んじるのが主流
五経以外に四書(『大学』『中庸』『論語』『孟子』)が存在 韓愈・柳宗元らに取り上げられ後に朱子学で重用されるようになる
e.g.五方(東南中西北)、五時(春夏土用秋冬)、五臓(肝心脾肺腎)、五官(目舌口鼻耳)
相剋の関係に沿った循環(五行相剋説)に沿って王朝の徳も循環するとされた
前漢末には劉歆がこれを相生の関係による循環(五行相生説)で説明しなおした(五徳終始説)
こちらは新を建設した王莽にとって都合がよく、後に曹丕などにも利用され宋まで受け継がれた
これに触発された董仲舒は孟子の提唱した仁義礼智に信(誠実さ)を加えている
さらに天と人との相互作用(天人相関説)を主張し人体と宇宙の対応関係や天の動きに沿った政治を説いた
五つの基本要素に陰陽の要素を加え複雑な現象を説明
周敦頤に継承され陰陽から五行が生じ万物をなすとされた
- 人性論 人間の本来性を巡る論説
孔子:人間の性質は生来のものであり大きな差は後天的に生じるとした
告子:性無善無悪説(性無記説) 生への固執が人間の本性だとした
董仲舒:陰陽思想に基づき善悪の二面があるとした 同じく前漢の人物である揚雄が善悪混淆説を唱えている
王充:性三品説 人間を善人・中人・悪人の三品に分ける形で性善説・善悪混淆説・性悪説の三つを同時に説明
後に韓愈は三説がどれも中等の人間について語ったものであるとした
李翺:仏教の影響から人間の善なる本質を主張し韓愈の反発を買っている
朱熹:性二元論 人間が本来備える善なる性(本然の性)と後天的な影響に基づく性(気質の性)があり前者を追求するべきである
王陽明:心には善悪を見定める能力が備わっているもののこれ自体は善でも悪でもないとする
戴震:人間は本来欲望(血気)と精神(心知)を備えており、精神が欲望を適切に導くことで理へと帰結する 欲望を押さえつけようとする朱子学に反発